[付録] ニュースと感想 (138)

[ 2009.07.20 〜 2009.08.14 ]   

  《 ※ これ以前の分は、下記のページで 》


    2001 年
       8月20日 〜 9月21日
       9月22日 〜 10月11日
      10月12日 〜 11月03日
      11月04日 〜 11月27日
      11月28日 〜 12月10日
      12月11日 〜 12月27日
      12月28日 〜 1月08日
    2002 年
       1月09日 〜 1月22日
       1月23日 〜 2月03日
       2月04日 〜 2月21日
       2月22日 〜 3月05日
       3月06日 〜 3月16日
       3月17日 〜 3月31日
       4月01日 〜 4月16日
       4月17日 〜 4月28日
       4月29日 〜 5月10日
       5月11日 〜 5月21日
       5月22日 〜 6月04日
       6月05日 〜 6月19日
       6月20日 〜 6月30日
       7月01日 〜 7月10日
       7月11日 〜 7月19日
       7月20日 〜 8月01日
       8月02日 〜 8月12日
       8月13日 〜 8月23日
       8月24日 〜 9月02日
       9月03日 〜 9月20日
       9月21日 〜 10月04日
       10月05日 〜 10月13日
       10月14日 〜 10月21日
       10月22日 〜 11月05日
       11月06日 〜 11月19日
       11月20日 〜 12月02日
       12月03日 〜 12月12日
       12月13日 〜 12月24日
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    2003 年
       1月02日 〜 1月13日
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       3月17日 〜 3月25日
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       5月11日 〜 8月11日
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    2004 年
       1月03日 〜 1月16日
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       4月24日 〜 4月25日
       4月26日 〜 5月11日
       4月26日 〜 5月11日
       5月20日 〜 5月29日
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       1月17日 〜 1月29日
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       5月30日 〜 6月07日
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       7月26日 〜 8月14日
       8月15日 〜 9月06日
       9月07日 〜 9月26日
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       2月27日 〜 3月08日
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       3月14日 〜 3月24日
       3月25日 〜 4月14日
       4月15日 〜 6月03日
       6月04日 〜 6月26日
       6月27日 〜 7月09日
       7月10日 〜 8月10日
       8月10日 〜 9月04日
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       01月01日 〜 02月16日
       02月17日 〜 04月18日
       04月19日 〜 06月01日
       06月02日 〜 07月19日
         07月20日 〜 08月14日








● ニュースと感想  (7月20日)

 (1)
  → Open ブログ 「日蝕の観測法」

 (2)
  → Open ブログ 「Firefox 3.5.1」

 (3)
  → Open ブログ 「豚インフルエンザの現状(7月)」

 * 上記の三つ、まとめて紹介を見るなら、
  → Open ブログ  (トップ・ページ)


● ニュースと感想  (7月20日b)

 NHK で、「米国の金融危機」や「金融工学」や「サブプライム」を話題にした番組があった。( 2009-07-19 の夜に放送。)
 その関連で、「米国の金融危機の理由は何か」という話題。
  → nando ブログ 「米国の金融危機の理由 2」


● ニュースと感想  (7月22日)

 (1)
 21日の朝、前項「米国の金融危機の理由 2」に、[ 付記3 ]を加筆しました。
   → nando ブログ 「米国の金融危機の理由 2」 の [ 付記3 ]

 (2)
 Winny と児童ポルノ規制、という話題。情報オタク向けの話題。
   →「Winny と児童ポルノ規制」


● ニュースと感想  (7月23日)

 「会計のインチキ論理」について。
 会計学を駆使すると、数字の操作でインチキ論理を構築することができる。で、たいていの人は、それを見抜けない。その例を示す。
  → 4000万円も損している日本の若者たち
 その趣旨は、次の通り。
  (1) 高齢者に比べて、若者の投票率はとても低い。
  (2) 高齢者は所得で多くを恵まれているが、若者は所得で多くを損している。
   (高齢者と若者の損得の差は、4000万円ぐらいになる。)
  (3) この両者は、因果関係がある。若者は、投票率が低いから、損をする。

 こういう論理を信じる人が多い。あっさりだまされる人ばかりのようだ。
  → はてなブックマーク・コメント

 なお、この著者は「だから若者は選挙に行け」というつもりのようだ。しかし、それでは結論になっていない。正しい結論は、こうだ。
 「だから若者は、選挙に行け。そして、高齢者の所得を奪い、若者に所得を回せ」
 具体的には、次の通り。
 「高齢者の年金を大幅に削減し、その一方、若者の社会保障負担を減らせ」
 つまり、次のことだ。
 「高福祉・高負担をやめて、低福祉・低負担にせよ」
 これがつまり、「高齢者の利益を減らし、若者の負担を減らせ」ということの意味だ。単純に言えば、「福祉を減らせ」ということだ。

 ここまで考えれば、著者がどう勘違いしているのかもわかる。
 若者が損をして、高齢者が得をしているのは、投票率のせいではない。正しくは、「年金」という社会保証システムそのものである。若いときには負担をして、年を取ったら金をもらう。……そういうシステムがあるから、というだけのことだ。
 若者は損をしているか? なるほど、今の時点では、損をしている。しかし彼らもまた、年を取れば、多くの所得を得る。そして、彼らが年を取った時点で、そのころの若い世代から「年寄りばかりが儲けている」と非難されるのである。  (^^);
 
 経済学的に言えば、次のように言える。
 現代の高齢者と、現代の若者と、どちらが恵まれているかといえば、一般的には、現代の若者の方が、ずっと恵まれている。生活水準の差を見ればわかる。現代の高齢者が若い頃には、自動車などは夢だったし、パソコンも夢だった。ちびまる子ちゃんやサザエさんの生活を見ればわかる。食事はちゃぶ台の上に目刺しが載っているのであり、牛肉なんてぜいたく品だったのだ。
 では、現代の若者は、どうして豊かな生活を送れるのか? 現代の若者が大幅に優秀だからか? 違う。現代の高齢者が、ガレキの山だった日本から、産業基盤を築いたからだ。ホンダもソニーもキヤノンも、当時は世界的には二流企業ないし中小企業にすぎなかった。ところが、現代の高齢者が、獅子奮迅の働きをしたおかげで、これらの企業を構築した。そして、その基盤の上にただ乗りした若者たちが、無料でこれらの産業基盤を引き継いだのである。
 現代の若者は、ソニーやトヨタなどの会社に入ったとき、自動的に、その会社の基盤を受け継げる。高齢者は、自分たちが構築した基盤を、次の世代の若者たちに引き継ぐ。こうして、高齢者は、多大なもの(金を稼ぐ基盤)を、若者たちに送った。そして、その代償として、そこから生まれる富の一部を受け取る。
 これはまあ、資本主義みたいなものである。資本家は、企業の資本金を提供し、労働者は、その資本金を使って生産活動をする。そして、生産活動をして得た利益の一部を、資本家に配当として渡す。……これが資本主義経済だ。それと似たことが社会全体でもなされている。「高齢者が産業の基盤を提供する」という形で。
 ところが、こういう経済の基本を理解できない人は、次のように文句を言う。
 「株主が不労所得を得るのはけしからん。働いているのは、労働者だけだ。だから、労働者だけが利益を取るべきであり、株主に配当なんかしない」
 こういう文句を言ったのは、共産主義者だった。そして、その結論は? 株主から資本金を得られなくなるので、会社を構築できなくなり、国家経済が破綻した。
 同様のことを、上記の人は言う。
 「高齢者が不労所得を得るのはけしからん。働いているのは、勤労世代だけだ。だから、勤労世代だけが所得を取るべきであり、高齢者には何もやらない」
 しかし、そのような社会になれば、高齢者は社会基盤を若者に譲ろうとしないだろう。会社だけでなく、道路や港湾なども、それを建設した高齢者だけが利用する権利を得て、若者たちは利用することができなくなる。結局、先の世代に何も与えたくなければ、先の世代から何も得られなくなる。その場合、現代の若者は、日本で働くことはできなくなり、途上国で生きるしかない。(かわりに、高齢者は、外国人労働者に社会基盤を譲り渡す。彼ら外国人労働者は、高齢者に福祉料金を払うかわりに、自分たちは素晴らしい社会基盤を譲り受ける。)

 結論。
 若者が高齢者に比べて、4000万円も損をしているのは、2億円ぐらいを生産できる社会基盤を譲り受けたからだ。若者は、2億円を生産する社会基盤を受け継ぎ、そのうち、4000万円を高齢者に払う。そして、それがイヤなのであれば、途上国に行けばいい。そうすれば、4000万円ぐらいを生産できる能力を自力で構築し、そこで得た4000万円をすべて自分だけで独り占めできる。
 似た例で言えば、こうも言える。株主に配当をするのが馬鹿らしいと思うのであれば、一流企業に就職するのをやめて、キャベツでも作っていればいい。あるいは、自営で八百屋でもやっていればいい。そうすれば、配当なしに、稼いだ利益の全額を独り占めできる。ただし、一流会社としての生産基盤を受け継ぐことができないから、もともとの生産額が低すぎる。他人に富を奪われるのを拒むだけで、生産する富の総額を増やす能力を失う。

 要するに、富の生産額を無視して、会計だけにこだわって、会計だけの損得を見ると、物事の本質を見失ってしまうのだ。

 彼らの典型的な発想は、次のことだ。
 「所得税を払うと、国が儲けて、自分は損をする。ゆえに、所得税を払わないために、所得が少なければ少ないほどいい。一番得する方法は、所得をゼロにすることだ。逆に、金持ちになって、年収が何億円にもなると、所得税をいっぱい払う必要があり、大損する。だから、年収が何億円にもならないように、努力しよう。それが最善だ」
 こういうアホ論理。そして、それに気づかない人々が、大多数だ。(特に、はてなというオタクのたまり場では、そういうアホ論理を信じる人が多いようだ。なぜ? 自分の損得ばかりにこだわって、社会性ない、というのがオタクの特質だから。)

 [ 付記1 ]
 別の面から本質を見れば、こう言える。
 「高齢者の面倒を見る社会保障制度とは、家族単位で子供が親の面倒を見ることを、社会政策化したことである。ここで、社会保障制度をなくせば、それぞれの子供が親の面倒を見ることになる。若い世代は、4000万円の損をするのを拒めば、4000万円を損しないで済むかわり、自分で自分の親の面倒を見るために、それだけの金を払わなくてはならない」
 つまり、社会全体で老人の面倒を見ても、個人単位で老人の面倒を見ても、同じことなのだ。ゆえに、冒頭のような論議は、意味がない。

 [ 付記2 ]
 それとは別になるが、子供が老いた親の面倒を見るのは、当然のことだ。なぜか? 子どもは自分が子供の頃に、親の世話になったからだ。
 ただし、子供の頃に親の世話になったことを忘れて、あとで老いた親の面倒を見るのを嫌がる人々もいる。これはつまり、
 「親から金をもらうのはいいが、親に金を与えるのはいやだ」
 「人から金をもらうのはいいが、人に金を返済するのはいやだ」
 という発想だ。こういう連中が、子供の頃に 4000万円分ぐらいのコストをかけて育ててもらったことを忘れて、あとで「金を返済するのはイヤだ」と言い出す。自分が与えてもらった教育も生活費も、さらには親の愛も、すべてを忘れて、「もらうのはいいが、返すのはいやだ」と言い出す。
 頭が幼児化しているのだろう。ガキと同じ。社会性が欠落している、とも言える。若い人々の根本的な難点は、そういう社会性の欠落なのだろう。
( ※ ま、若い世代だけが馬鹿だらけ、というわけじゃなくて、中年だって同様だが。それでも、今の高齢者は、そういう馬鹿げた主張を信じる人は少なかった。彼らは「親孝行が大事」というような倫理観で育っていたし、今のガキ大人たちのような「とにかく金が欲しい、自分だけが良ければいい」という発想とも違っていた。……伝統的な価値観が失われ、人間としての倫理観も失われつつある。そういう時代を「IT時代は素晴らしい」と称して、ゲーム機に夢中になっている若者たちばかり……という図式。IT時代の意味は、人間性の崩壊か。)


● ニュースと感想  (7月23日b)

 「総選挙の名前」について。
 総選挙の名前を考える記事がいろいろとある。理解しがたいものが多いが、私がちょっと面白いと思ったのは、「バカタロー解散」というやつ。  (^^);
 ただ、私としては、こう提案したい。……「日食解散」(日蝕解散)
 これもシャレだが、背景には、次の名歌がある。
 「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」

 驕る平家も久しからず。驕る自民も、小泉も。与党は3分の2以上を占めていたが、それも、太陽の欠けるように、望月の欠けるように、激減して、真っ暗になってしまうのである。
 時事ネタのシャレ。   (^^)v

 [ 付記 ]
 歴史的にも、この名前はわかりやすいと思う。めったにない日蝕という出来事が起こり、それと同時に、めったにない政権交替が起こった。どちらも歴史上の出来事だが、それがちょうど同時期に起こった。
 うまいネーミングでしょ? 「コクの時間」よりは、いいはず。


● ニュースと感想  (7月25日)

 「経済財政白書」について。
 経済財政白書が出た。
   → 各社ニュース
   → 内閣府要旨(その1)

 最後の「要旨(その1)」に詳しい図表がいろいろと出ている。これで一応、詳しい内容はわかる。もっと簡単な話は、各社記事を参照。
 私の見解を言うなら、次の通り。

 (1) 「景気は底打ち」という認識と、「余剰人員(過剰雇用)が 600万人」という認識とは、両立しない。後者は「景気がさらに下がる」ということを意味する。白書は「景気が下振れのリスク」と表現しているが、リスクなんてものじゃないでしょう。当然そうなるはずだ。その逆に「景気は底打ち」という認識はおかしい。
 (2) なぜか? 余剰人員があれば、企業は当然、リストラするからだ。したがって、今後は、「リストラの進行にともなって、さらに景気は低下する」というふうに認識するのが妥当だろう。
 (3) ただし、可能性としては、「景気が回復して、余剰人員がなくなる」というシナリオの成立する可能性もある。しかし、現実には、それはないでしょう。そんな「棚からボタモチ」はありえない。白書は「各国がそろって輸出増加」というふうに説明しているが、これは何じゃ? 「各国がそろって輸出増加」なら、輸出相手の国では「輸入増加」となるはずだ。そんなことはありえない。あるとすれば、「途上国または産油国がそろって輸入増加」ということえだが、そんなことはありえない。ほとんど「棚からボタモチ」の期待。
 (4) 外需頼みではダメだ、というのは、自明の理。そこで、内需拡大も、白書は提言している。ただし、その内容が良くない。「個人消費の拡大」を唱えるのはいいが、その手段が不足している。
 「減税と給付金の支給を組み合わせて低所得世帯を支援する「給付付き税額控除」の導入」( → 読売 )  というのは、いい提案だが、その目的は、「内需拡大」ではなく、「若年から中年の現役世代の所得格差を是正するため」である。何じゃ、これは?
 
 結局、部分的には、いい点も突いているのだが、相対的に、ピンボケ。現状認識も、対策も、かなりピンボケ。
 ただし、「構造改革で景気回復」なんて唱えた小泉時代に比べれば、ずっとマシだ。小泉のやったことは、景気悪化策だったが、今回の白書は、少なくとも景気悪化策を取っているわけではない。(無為無策は、自殺に勝る。)


● ニュースと感想  (7月25日b)

 「民主党の分裂」について。
 民主党が神奈川県で、分裂選挙。参院議員の浅尾慶一郎が衆院選に無所属で出馬し、党公認と共倒れの可能性がある。空白区の8区ならば公認が得られるのに、それを拒否してのこと。( → 毎日新聞
 どういうことなのかと思ったら、本人は、「当選後に、民主党復党」と目論んでいるらしい。
 当選した場合、衆院本会議での首相指名選挙では「鳩山由紀夫(民主党代表)と書く」と言明。将来の復党についても「未来永劫(えいごう)離れるわけではない」と含みを持たせた。( → 時事通信
 馬鹿ですね。今回当選するかどうかはともかく、ずっと当選することはありえない。今回は民主党の票が自民党の倍になるかもしれないので、うまく行けば浅尾が当選するかもしれない。しかし、次回以降、民主党が自民党の倍になることはありえない。とすれば、必ず、共倒れになる。そこで浅尾は、
 「共倒れを回避するために、民主党は自党の候補を立てないだろう」
 と思っているのだろう。しかし、そんなことはあるまい。
 民主党は次回以降、必ず、対立候補を立てる。そして、共倒れを狙う。なぜか?
 「自民党候補を当選させるくらいなら、民主党の友達の俺様を支援するだろう」
 というのが浅尾の目論見だろう。しかし、民主党は、そんな甘いことを許さない。反党活動をする自党議員を認めたら、党内がガタガタになるからだ。
 したがって、民主党の狙いの順位は、次の順だ。
  1.反党活動をする浅尾を落とす。(共倒れを辞さず)
  2.自民党候補を落とす。
  3.自党の候補を当選させる。
 この順になる。したがって、次回以降、浅尾の立候補する選挙区には、必ず、民主党候補が立つ。その狙いは、自党候補の当選ではなく、浅尾の落選だ。とにかく、浅尾を当選させることだけは、絶対に許さない。自党と共倒れになって、自民党が当選しようが、構わない。それで損するのは、たったの1議席にすぎないからだ。
 一方、浅尾みたいな勝手な人間を許したら、あちこちで反乱が続出して、大幅に議席が減るだろう。だから、見せしめのためにも、浅尾を絶対に落選させなくてはならない。それが組織として最優先の方針となる。1議席の損得よりも、全体の損得が大事だからだ。

 こういうことは、組織にいれば、当然のこととなるだろう。たとえば、あなたが会社にいて、こっそりライバル会社に情報を漏らしていたとする。そんなことをしたら、どうなるか? 解雇か? そう思ったら、甘い。解雇だけでなく、裁判で訴える。裁判で最高裁まで争う。そのことで、その会社は、裁判費用で何億円もかかるだろうし、損害賠償で得る利益は端金に過ぎまい。それでも裁判に訴えて、徹底的に争う。なぜか? そうすれば、あなたは裁判費用として、何千万円も払う必要が出てくるからだ。会社側が何億円も損するということは関係ない。あなたに何千万円も払わさせて、あなたの人生を破滅させることが目的となる。なぜ? そうすれば、「会社を裏切ったやつは徹底的に破滅させられる」という教訓を、従業員に植え付けることができるからだ。そのことで、社内における裏切りを阻止する。……これが大事なのだ。
 浅尾みたいなのは、組織の論理というものを、まったく理解できていない。社会経験が稀薄すぎる。あまりにも馬鹿だ、と言えるだろう。

 [ 付記 ]
 ちょっとだけ似た例として、郵政民営化に反対票を投じて党公認を得られなかった野田聖子や亀井静香などの自民党議員(当時)の例がある。これらの例では、のちに復党も可能だった。そこで、浅尾は、「それと同じさ」と思っているのだろう。
 しかし、両者は全然違う。野田聖子や亀井静香などは、もともとの選挙区から継続して立候補しただけだ。浅尾は、参院の選挙区から、衆院の選挙区へと、転出する。(そして公認を得られなかった。)
 両者の事情は全然違う。浅尾の方は、ただの「わがままによる反党活動」であるにすぎない。しかも、本人は、そのことを理解できていない。「当選すれば、おれのもの。野田聖子と同じさ」と思い込んでいるのだろう。(なお、野田聖子は、法案に賛成票を投じなかったことゆえに「離党勧告」を受け、それにしたがって離党しただけだ。一方、浅尾は、「反党活動」を名目に除名された。全然違う。法案に造反する例なら多数あるが、反党活動をする例は浅尾ぐらいしかない。)(なお、どうして反党活動かというと、民主党の参院議席を一つ減らし、衆院選でも民主党の議席を一つ減らそうとしているからだ。下手をすると、自民党が二議席を獲得する。郵政民営化法案に限った造反をした野田聖子とは、全然違う。万引きと殺人ぐらいの差がある。)

( ※ こいつはよほどの馬鹿かと思って、経歴を調べたら、「東京大学,スタンフォード大学経営大学院,MBA」と Wikipedia に書いてあった。あれれ。  (^^); 馬鹿というよりは、自惚れ屋さんか。世間知らずの、おぼっちゃま。)


● ニュースと感想  (7月26日)

 「経済学と物理学」について。
 「経済学と物理学」という話題を、先の金融工学の項目の最後に、加筆した。
   → nando ブログ 「米国の金融危機の理由 2」 の 最後


● ニュースと感想  (7月26日b)

 「ちょっと いい話」について。
 いい話。
  → アフラックという保険会社の企画PRページ
 ガン保険の宣伝らしいが、ガン患者の話があり、そのうちの一つに、「氷上のプロポーズ」という話がある。井上という女子スケート選手の話。実話。簡単な内容は、ニュースになったこともある。
 詳しい話がここにある。感動して、不覚にも涙ぐんでしまった。

 参考。
  → そのときの動画( YouTube )
  → 本人の英文サイト


● ニュースと感想  (7月26日c)

 「麻生の不適切発現」について。
 麻生首相がまた不適切発現をした。そのあとで、「意図が伝わっていない」と釈明した。
  → 時事通信
 言いたいことは、わかりますけどね。それじゃ、もっとひどいんじゃないの? 
 「私は日本語をちゃんとしゃべれないんです。意図通りに話すことができないんです。」
 ま、顔のどこかが曲がっているせいで、とは言わないが。  (^^);
 歪んでいるのは、頭でしょう。漢字を読めないだけじゃないのね。

 【 追記 】
 解説。
 麻生首相は、次のように言いたかったのだろう。
 「高齢者だって、まだまだ働ける。だからしっかり働いて、所得を稼いで、納税してください。自分を豊かにして、国も豊かにしてください。皆さんはまだまだ働けるんですよ。それだけの能力があるんですよ」
 しかし、それを次のように言ってしまった。
 「高齢者は無能なんだよ。働く以外に、取り柄はないんだ。だから働きなさい」(ロボットや奴隷のようにね。)
 このカッコ内は、私の付け足しだが、そういうニュアンスが感じられる。
 で、麻生首相の問題点は、何を言おうとしたかではなくて、言葉の表現がダメだ、ということだ。要するに、頭が悪い。漢字も読めないし、言葉をきちんと使って話すこともできない。(オタクの特徴とも重なるが、とにかく言語能力が貧弱。)
 結局、この件では、私は揚げ足取りふうのことをするつもりはないが、麻生の言語能力の低さには、ほとほと呆れる。酔っ払いの中川や草なぎという連中と、同類だろう。政治家としての能力の低さに疑問符が付くというより、人間的な資質として疑問符が付く。無能だというよりは、恥ずかしい人間。だから、麻生首相をまともに批判するつもりはない。ただ呆れはてるだけだ。

 [ 付記 ]
 なお、鳩山みたいに正面切って批判するのも、どうかと思いますね。自分の幽霊献金は、どうなんだか。こっちは、政治家としての問題であり、言葉の問題ではない。ずっとひどい。アホー首相を批判する、鳩ポッポ党首。
 ことわざ から。
 【 鳩の飼い 】 口先で人をたぶらかして世渡りをする人。詐欺師やいかさま師などにいう。
 【 鳩を憎み豆を作らぬ 】 わずかな事にこだわって必要なことまでもしないために、自分にも世間にも損害を招くこと。


● ニュースと感想  (7月27日)

 「伊藤元重の折衷案」について。
 伊藤元重・東大教授が、財政再建と景気回復について、折衷案を提言している。(読売・朝刊・1面・コラム 2009-07-26 )
 これを読んで、呆れてしまった。こういう折衷案を考えることは、誰でもできる。まるで学生のレポートだ。こんな形で「中間案(折衷案)を取れば、どちらも成功する」という主張をするなんて、その凡庸さに、呆れるほかはない。こんなものを大新聞の大きな紙面を使って、大々的に語るなんて、いよいよボケてきてしまったのではなかろうか? 職を辞した方がいいだろう。

 以上は、凡庸さの指摘だった。以下では、その凡庸な発想のどこが間違いであるかを、はっきり指摘しよう。

 そもそも、財政再建が大事なのは、なぜか? そこのところを伊藤は全然理解していない。単に「会計をきれいにするのが大事」というふうに信じているだけだ。頭ごなしに命題を受け入れており、その意味を理解していない。そこで、教えよう。
 財政再建が大事なのは、将来の物価上昇を阻止するためである。財政赤字がどんどん蓄積すると、将来、ものすごいハイパーインフレが起こりかねない。だから、財政赤字を拡大してはならない。……ここでは、将来の破綻を回避するのが目的であり、今現在の窮状を回避するのが目的ではない。その違いを理解しよう。
 一方、今現在の時点では、物価上昇はあった方がいい。大きな物価上昇はともかく、少しの物価上昇はあった方がいい。換言すれば、「需要不足」という現状においては、「需要が過剰気味」というふうになった方が、好ましい。そういうふうに需要が拡大した方が好ましい。
 以上をまとめると、次の通り。
  ・ 将来的には、大幅な物価上昇があってはならない。 → 財政赤字はダメ
  ・ 今現在では、小規模の物価上昇があった方がいい → 財政赤字は好ましい
 ここでは、(矛盾というほどではないが)対立がある。そして、そこで、どちらを取るべきかというと、両者の折衷案を採るべきではなく、後者を取ればいい。
 比喩的に言おう。借金をすると、将来、大変なことになる。だから、原則、借金をいない方がいい。しかし、今すぐ、大きな病気になっているのであれば、借金をしてでも、その病気を治した方がいい。病気を放置して、死んでしまっては、何にもならないからだ。……ここで、「病気」とは「不況」のことである。「財政赤字を回避するためのが大事だから、今の不況を放置していい」ということにはならない。今の段階では、赤字になるとしても、「不況」という病気を治すことが先決だ。

 以上をまとめると、次の結論が正しい。
  ・ 現時点では、小規模の物価上昇が起こるといい。 → 財政赤字が好ましい。
  ・ 景気回復後は、大幅な物価上昇を避けるべき。 → 増税が好ましい。
 この二つをまとめれば、こうなる。
 「現時点では、財政赤字により、不況を脱するべき。いったん不況を脱したら、大幅なインフレを避けるために、増税をするべき」
 つまり、「現在の減税と、将来の増税」という「中和政策」が正解だ。
 そして、これは、「減税と増税の中間の値をずっと維持する」という折衷主義とは、全然異なる。

 比喩的に言おう。
 A点からB点まで移るには、どうすればいいか? 常識的には、次のようになる。
 「最初は加速して、次に定速運行して、最後に減速して止まればいい」
 つまり、時期に応じて、加速や減速をすればいい。これは「中和政策」に相当する。
 一方、折衷案もある。次のように。
 「高速すぎれば、問題だ。停止していても、問題だ。ゆえに、高速と停止との中間状態という折衷案を採ろう。亀のようにゆっくり移動すれば、A点からB点までうまく移れる」
 馬鹿丸出し。  (^^);
 つまり、「足して2で割る」という子供じみた発想は、学生(というより小学生か幼稚園児)のレポートには適しているが、大学生や教授の主張には適していない。まともな頭があれば、「足して2で割る」という折衷案ではなく、「そのときそのときに最適のものを選ぶ」という正解を得られるはずだ。
 伊藤教授の出したレポートには、「不可」点しか与えられない。落第です。単位は上げません。レポートを書き直しなさい。


● ニュースと感想  (7月28日)

 「民主党の消費税引き上げ」について。
 民主党が「消費税引き上げ」の可能性を示している。今すぐというわけではないが、将来的な可能性として。
  → 民主・岡田幹事長、消費税上げ議論否定せず(読売新聞)
  → 消費税論議、鳩山氏も容認=民主・岡田氏(時事)
  → 消費税引き上げ「議論はすべき」 民主・藤井氏( MSN産経)

 前日の伊藤元重への反応かとも思ったが、そうではなく、自民党の「財源を示せ」というキャンペーンへの反論として財源を示しているのだろう。
  → 自民党の「財源を示せ」というキャンペーン
 ま、それはそれで、「財源を示せ」と言われて、財源を示すつもりになったらしい。しかし、ピンボケだ。

 正しくは? 
 増税は確かに必要だが、その理由は、財源を示すこと(赤字を出さないこと)ではない。赤字は出していいのだ! つまり、借金していいのだ! ……ただし、永遠の借金はありえない。では、いつ、借金を返済するか? その時期は、「今すぐ」ではない。正しくは、「物価が大幅に上昇しかけたら」である。
 つまり、インフレが過熱しかけたときに、そのとき、増税すればいい。これが正解だ。
 ただし、いつまでもずっと借金を続けていると、容易に「ハイパーインフレ」になりやすい。だから、「ずっと借金を続けること」は不可能だ。
 だとしても、不況のときには、増税は必要ない。簡単に言えば、次のようになる。
 「景気回復が先、赤字解消はその後」
 「まずは借金で景気を回復し、景気が回復したら、景気過熱の予防のために、増税をする」
 これが経済学というものだ。そしてそれは、「財政をきれいにする」という財政主義とは全然異なる。……民主党はそこのところを理解していない。(民主党だけじゃなくて、みんなそうだが。)

 本項では、世間の誤解に対して、正解を示す形で説明した。


● ニュースと感想  (7月28日b)

 「民主党のマニフェスト」について。
 民主党がマニフェストを発表した。
   → 民主党のマニフェストのページ
 このなかで一番、重点が置かれているのが、自動車優遇。ガソリン減税( 2.5兆円)と高速道路の無料化( 1.3兆円)で、合計 3.8兆円。……これだけ重点的に優遇しているのだから、そのことを訴えているのかと思ったら、知らんぷり。「子育てや教育のため」というような主題のどれにも絡んでいない。
 なるほど。ガソリン浪費への援助というのは、典型的な反エコで、かつ、無駄づかいの典型だろう。それが政策の主題にならないというのは、よくわかる。
 しかしまあ、そういう下らないことのために、最大の金を費やすとはね。呆れはてる。できれば、正直に、次のように記すべきだ。
 「支持母体である自動車労連と、献金してくれる自動車産業のために、国民の税金をばらまくんです。彼らが民主党に献金してくれるから、わが党も彼らのためにお返しするんです。わが党は彼らに買収されているんですよ」
 と。つまり、目的は「賄賂の対価」である。はっきりとそう示すべきだ。黙っていないで。

 ついでに言えば、詐欺的な誤魔化しが、もう一つある。
 「子ども手当に多額の金」
 と公約しているが、これはインチキ。その分、他の金が減るからだ。
  ・ 家族控除の廃止による、所得税の増税
  ・ 児童手当の廃止による、その分の金
 差し引きすれば、各家庭で実際にもらえる金は、たいして多くない。「児童手当が拡充された」という程度にすぎない。

 要するに、民主党の公約は、ペテンである。子ども手当には、「 31万円上げます」と言いながら、25万円ぐらいを奪い取る。実質的には、たいして与えたことにならない。その一方で、ガソリンを浪費する人々のためには、莫大な金をプレゼントする。レクサスやベンツみたいにガソリンをがぶ飲みして排ガスを撒き散らす高級車を所有している人々には、たっぷりと金を援助する。その一方で、他の人々には、赤字の借用証だけをプレゼントする。
 ま、かわいそうなのは、自動車を運転しない、エコな人々だ。(バスを利用する高齢者など。)…… 民主党は、自民党よりはマシかもしれないが、ペテン度については、小泉と同じぐらいペテン度が高い。どんくさい福田や麻生の方が、ずっとペテン度は低い。

 [ 付記 ]
 麻生首相は、これでおしまいのようだが、今にして思うと、そんなに悪い首相ではなかった。無為無策であったというのが素晴らしい。その点、小泉は悪化させたので、悪い。また、総裁選で麻生の対抗馬であった与謝野馨は、財政再建論者なので、最悪だ。その点、定額給付金という方針を取った麻生は、対抗馬たち(石原・小池・与謝野)と比べれば、最善だったと言える。
 麻生政権の時代には、米国金融危機で状況が悪化したが、これは麻生政権自身のせいではない。まとめて評価すれば、麻生政権は、評価が「少しプラス」になるので、他の政治家と比べれば、ずっとマシだ。小泉は「マイナス」だし、与謝野ならば「大幅なマイナス」だし、福田は「ゼロ」だが、麻生は「少しプラス」である。ただ、米国金融危機による大幅なマイナスがのしかかったのが、彼の不運。
 鳩山は? 経済はどうなるかしれないが、排ガスと炭酸ガスを大幅に増やすことだけは、確実だ。自動車産業と石油産業にとっては、大喜びの結果となるだろう。関係産業の人々は、「万歳! 大儲け!」と叫ぶかもしれない。……ただし、その原資は、国民の金だった、ということをお忘れなく。国民が金を奪われ、その金を、自動車産業と石油産業がいただくわけだ。ただし、彼らがいただけるのは、国民が奪われた金の全額ではない。国民が奪われた金の一部しか、彼らはいただけない。そして、国民が奪われた金の大半は、排ガスと炭酸ガスとなり、地球環境を悪化させることに使われるのである。


● ニュースと感想  (7月29日)

 (1)
 経済学理論の基礎中の基礎として、「不均衡とは何か」というのを、モデル的に説明しました。いずれも nando ブログ。
  → 「流動性の罠」とは (これは過去記事の転載。)
  → トリオモデル    (これは過去記事の再論。)

 (2)
 前項では、民主党の政策を批判したが、似たような話で、この春には政府・自民党の政策を批判した。古い証文みたいだが、改めて紹介する。( nando ブログ)
  → 需要拡大の方法


● ニュースと感想  (7月29日b)

 「(書籍)ブラックスワン」について。
 朝日新聞の、月曜版・別刷り特集に、世界の医薬会社の競争、というような話が出ていた。ネットにもある。(今回は一部だけでなく、かなり多くが掲載されている。)
  → 朝日 globe

 紙の新聞の方では、広告があって、「ブラックスワン」という本の紹介があった。ちょっと見て、興味を引かれたので、ネットで検索した。上位にあるのは、Amazon,池田信夫 blog,404 not foundブログ など。このうち、池田信夫のページは全然役立たずだったが、他の二つはかなり役立った。
 一部紹介すると:
 《 内容紹介 》
 むかし西洋では、白鳥と言えば白いものと決まっていた。そのことを疑う者など一人もいなかった。ところがオーストラリア大陸の発見によって、かの地には黒い白鳥がいることがわかった。白鳥は白いという常識は、この新しい発見によって覆ってしまった。
 「ブラック・スワン」とは、この逸話に由来する。つまり、ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象の意味である。タレブによれば、「ブラック・スワン」には三つの特徴がある。一つは予測できないこと。二つ目は非常に強いインパクトをもたらすこと。そして三つ目は、いったん起きてしまうと、いかにもそれらしい説明がなされ、実際よりも偶然には見えなくなったり、最初からわかっていたような気にさせられたりすることだ。
 ──
《 下巻 P.216 》
 私の美的感覚では、散文より詩、ローマ人よりギリシャ人、優雅さより挟持、教養より優雅さ、見識よりも教養、知識よりも見識、知性よりも知識、そして真理よりも知性の方が好きだ。
 その他、いろいろと話が紹介されているが、これはどうやら、エッセイとして読み流すのが妥当であるようだ。読み終えたとき、「ああ、面白かった」と思って本を閉じればよく、そのあとに何も残らなくてもいい、という本。
 では、なぜ? 

 この本について、「米国の金融危機のような稀な出来事をあらかじめ予測した唯一の本」というふうに評価する人々もいるようだ。しかし、「稀な出来事が起こる」というようなことは、予測でも何でもない。時期ですら判明しないからだ。
 「米国の金融危機のような稀な出来事をあらかじめ予測した」というのは、私やクルーグマンのように、のように、「米国の不動産バブルは必ず破裂する」と予測した人のことを言う。ついでに言えば、「米国の不動産バブルは必ず破裂する」と予測した人は、私たち二人だけではない。当時、新聞でも取り上げられたし、その懸念はかなり多くの人々に共有されていた。「米国の金融巻派は、日本のバブル膨張と破裂に重なるのでは?」というふうに。
 したがって、「米国の金融危機は(本書の著者以外には)誰にも予測されていなかった」というのは、素人の勘違いにすぎない。実際には、経済学の世界では、かなり広く認知された懸念だったのだ。そのことを理解できなかったのは、金融界のトレーダーだろう。彼らはあえて懸念を打ち消して、金融工学で「行け行けどんどん」と強く主張した。そのせいで、真実を見抜けなかった。
 
 どんな分野でも、大切なのは、「真実」である。経済学の世界でも、「真実」を追究していれば、「米国の不動産バブルは必ず破裂する」と予測できたのだ。
 著者は、「私の美的感覚では、……真理よりも知性の方が好きだ」と書く。ま、それは勝手だが、真理をないがしろにして、知性ばかりを優先すれば、それはただの知的なお遊びにすぎなくなる。言葉で言えば、ディレッタントだ。
 本書を一言で言えば、ディレッタンティズム(衒学趣味)そのものだ。経済学の真実を追究しようとすることはなく、単に「ブラックスワンがどうのこうの」と知的なお遊びをしている。
 こういうのは、暇つぶしにはいいが、役には立たない。(だから池田信夫や 404 が推奨する。彼らが推奨する本は、たいてい、役立たずの暇つぶし本だ。彼らの目的は、下らない本を推奨して、アフィリエイトを稼ぐことだけ。……一種の詐欺師ですね。引っかからないように、要注意。)

 [ 付記 ]
 米国の金融危機の真相は? また、不動産バブルの破裂をあらかじめ予測したということはどういうこと?
 これらの疑問には、次の項目を読めばいい。(7月20日に示した項目。)
   → nando ブログ 「米国の金融危機の理由 2」
 この項目と、その前後の項目に、いろいろと記してある。


● ニュースと感想  (7月30日)

 「1票の格差」について。
 1票の格差という問題がある。これについて、「国民審査の権利行使を」という運動があるそうだ。
  → 朝日新聞
 たしかに、1票の格差は、現状ではひどい状況にある。
  → Wikipedia
 また、民主党としても、自民党に有利な現行方式は、改めたいところだろう。では、改めるとしたら、どう改めるといいか?

 私としては、次のように提案したい。
 (1) 基本は、単純なドント式。最初に1ずつ配分することはしない。
 (2) 小さな県は、その方式で損をするかもしれない。そう判断した場合、その県は、隣の県と合併することを許容する。(選挙区についてのみの合併。)

 具体的に言えば、次の通り。(参院選の場合。)
 鳥取県や島根県は、それぞれ、議席がゼロになりそうだ。しかし、両方が選挙区を合併することで、新たに1議席を取れる。合計ゼロ議席から、合計1議席になる。そこで、両県は選挙区の合併を申請し、そのことが許容される。
 一方、東京都や大阪府は、合併しても議席数は同じだから、合併の効果がない。だから、現状のままでいい。
 
 この方針を突き詰めると、各県は議席数を最大化しようとして、選挙区をなるべく均等に配分するようになる。その結果、最終的には、1票の格差の倍率は、どんどん1倍に近づいていくだろう。2倍を超えると違憲だ、という見解があるが、上記の方針を取れば、参院選では 1.5倍以下に収まりそうだし、衆院選なら 1.2倍以下に収まりそうだ。こうなれば、1票の格差という問題は、ほとんど存在しなくなるだろう。

 [ 付記 ]
 選挙区を変更しないまま、単純に配分する方式としては、ドント式のほかに、いくつかの方式がある。
  → Wikipedia
 数学者がいろいろと頭をひねっているようだ。ただし、結果は政治的に妥当だとしても、理屈では合理的ではない。たとえば、ある県では 10万票で1議席を多く取れるのに、ある県では 11万票でも1議席を多く取れない。そういう不合理なことが起こりがちだ。(票全体の比率を見れば大きな差はないとしても。)
 合理性を考える限りは、ドント式以外にはありえない。ただ、それだと、小さな選挙区が著しく不利になる。そこで、その問題を解消しよう、というのが、本項の話題だ。
 本質的に言えば、「どの選挙区が得をするか」というふうに考えるよりは、「倍率をなるべく1倍に近づけよう」というふうに考える方がいい。数学的な操作よりは、物事の本質を考える方がいい。


● ニュースと感想  (7月31日)

 豚インフルエンザなどのインフルエンザでは、死者が出ている。では、その死者は、どのくらいのものなのか?
  → Open ブログ 「インフルエンザと致死率」


● ニュースと感想  (8月01日)

 ケネディ暗殺の真犯人は、ケネディ自身である。……そういう仮説(自殺説)を示す。  これは、奇妙に思えるかもしれないが、これだけが論理的に合理的である。
  → nandoブログ「ケネディ暗殺の真相(自殺説)」


● ニュースと感想  (8月02日)

 景気回復には、どうすればいいか? もちろん、総需要を拡大すればいい。 では、総需要の拡大には、どうすればいいか?
  → nando ブログ 「景気回復の方法は? (総需要の拡大)」
 ( ※ これまで述べた話を、見通しよく簡単にまとめる。本サイトの初心者向け。)


● ニュースと感想  (8月02日b)

 「構造改革と共産主義」について。
 小泉の構造改革は、ひどいものだった。それは「供給拡大策(供給改善策)」であるがゆえに、「リストラ」を通じて、日本経済を縮小させた。(縮小均衡に導いた。)結果的に、総生産はどんどん縮小し、日本の国民所得は大幅に低下した。その一例が、「派遣社員の拡大」である。
 しかし、である。今の状況と比べると、小泉の方がまだマシに思えてくる。なぜか? 今の状況では、「構造改革」(民営化路線)とは正反対の、「共産主義」という路線が取られつつあるからだ。民主党もそうだし、自民党もそうだ。
 具体的には、民主党の、次の政策だ。
  ・ 高速道路の無料化
  ・ ガソリン税の減税
  ・ 農家への所得補償
  ・ 子供手当
 また、自民党も同様で、
  ・ アクアラインの大幅価格低下。( 800円 )
 という政策を取っている。( 8月01日の報道。)
 
 では、このような政策は、どんな意味があるか? 次のことだ。
 「共産主義社会のソ連と同じで、国庫補助金により、原価を大幅に下回る価格で国民に提供する」
 これは要するに、小泉の「民営化」の正反対で、「国営化」(およびそれに準じたもの)という路線である。つまりは、共産主義路線だ。
 げっ。小泉は、道路公団を民営化しようとしたが、民主党は逆に、道路公団を国営化しようとしている。道路公団は、もともとは「独立的な公団」(第三セクター)であって、国営でも民営でもなく、独立採算事業の公社みたいなものだった。小泉はそれを、完全民営化しようとした。ところが民主党は、完全国営化して、莫大な赤字を国庫で補助しようとしている。これこそ、共産主義路線。
 で、その結果は? 共産主義のいつもの通り。コスト無視の非効率経営がのさばり、社会の最適配分が失われる。具体的には、「効率的な電車やフェリー」という選択肢が奪われ、「渋滞による社会的な効率低下」という蟻地獄に落ち込む。

 このことは、すでに、あちこちで報道されている。
  ・ JRやフェリー会社は、乗客減少で、大幅な赤字。
  ・ 高速道路は、あちこちで渋滞が発生して、物流が大幅悪化。
   また、高速道路のバスは、渋滞で定時運行ができなくなり、乗客減。
 これらを一言で言えば、「社会的な最適配分が失われたせいで、社会的に大幅に効率低下が起こる」ということだ。
 そして、それは、「共産主義経済」では、当然のことなのである。補助金をもらえた人々は、「値下げで嬉しい」と思うが、その分の金は税金でまかなわれる、ということに気づかないでいる。高速道路で 1万円もらって、増税で1万円奪われて、それで喜んでいる。その一方、両者の差し引きはトントンでも、社会的な効率低下のせいで、社会全体の富の総量は減っていく。(構造改革の狙いとは逆で、生産性の低下が起こる。)

 こうしてみると、民主党の狙う「共産主義政策」が、小泉の「構造改革」と比べて、いかにひどいかがわかる。
 だから、自民党は、民主党の政策について、「財源の裏付けがない」と指弾するべきではない。むしろ、「民主党は、共産主義経済を狙っており、日本経済を破壊しつつある」と指弾するべきだ。さらに言えば、「炭酸ガス増加と、石油浪費で、エコに反する汚い政策だ。環境を破壊する、社会悪の政策だ」と指弾するべきだ。
 ま、私だったら、そう指弾する。しかし、残念ながら、自民党には、それはできないようだ。というのは、自民党も、しょせんは同じ穴のムジナだから。
 ただ、小泉が自民党の総裁だったら、「構造改革」を唱えることで、民主党の「共産主義政策」を打倒できるかもしれない。かつては、「改革か、抵抗勢力か」という対立図式を出したが、今度はそのかわりに、「生産性向上か、共産主義か」という形で、「民営化か、国営化か」という対立図式を出せばいい。
 
 小泉の「構造改革」というのは、ひどい路線だったが、今の民主党の「共産主義」という路線に比べれば、はるかにマシなのである。
( ※ 麻生は「定額給付金」で票を買収しようとしたが、民主党の買収に比べれば、児戯に等しい。民主党の買収政策は、共産主義直伝のものであり、まったく最悪のものだ。……ただし、国民は馬鹿だから、小泉の「構造改革」にだまされたあと、民主党の買収政策にだまされる。国民は、小泉の「構造改革」でひどい目にあったが、このあとは、民主党の「共産主義政策」でひどい目に遭うだろう。下手をすると、ひどいスタグフレーションになるかも。価格上昇と失業の同時発生。この世の地獄。……民主党が狙っているのは、それであるようだ。小泉のもたらしたデフレよりも、もっとひどい。)

 [ 付記1 ]
 民主党の政策は、共産主義政策よりもさらに悪い、とすら言える。ソ連で無償化されたのは、暖房燃料とか、医療費とか、最低限の食糧とか、そういうふうに「人間にとって必要最低限のもの」であった。一方、民主党が無料化するのは、「高速道路」や「ガソリン税」、つまり「高齢者には買えないぜいたく品で、かつ、排ガスを撒き散らし、炭酸ガスを放出し、渋滞を巻き起こす」というものである。最も抑制しなくてはならないものを、最も推進する。……ま、気違いと同じ。「サリンをばらまこう」という発想と似ている。「サリンの無料化」みたいなものですかね。  (^^);
 どうせやるなら、「米の無料化」、「医療費の無料化」、「保育費の無料化」の方が、まだしもマシだ。しかし民主党がやるのは、そうではない。その意味で、民主党は、共産主義よりももっと悪い。「環境汚染主義」とでも言うべきだろう。真っ黒。
( ※ どうせなら、「ビール税の減税」の方がマシだ、とも言える。同じく炭酸ガスを排出するにしても、ゲップの排出量はたかが知れている。   (^^); )

 [ 付記2 ]
 ついでだが、「子供手当」や「高校教育費の無償化」も、あまり好ましくない。ま、方針としては、好ましいのだが、いきなり導入すると、国民間で損得が発生しやすい。
 たとえば、今年の高校三年生は、もらえるお金がゼロなのに、来年の高校三年生は、何十万円ももらえる。たったの1年の差で、莫大な差が生じる。……これでは不公平感が強すぎる。他の子供手当なども同様だ。
 この問題を解決するのは、たった一つ。「国民全員に、一律の給付」である。その意味で、定額給付金の方が、はるかにマシだ。(名前と規模は、ダメだったが。)
 ま、麻生というのは、ダメな宰相だったが、民主党の次期首相は、ダメと言うより、最悪に近い。民主党は、政治的には自民党よりはマシであろうが、経済的には、自民党よりもずっと悪い、と言える。自民党は、おおむね「無為無策」であり、点数は零点ぐらいになるが、民主党は、「経済の破壊」であるから、点数はマイナスとなる。
 ま、とりあえずは、「次の春(またはその次の春)は、民主党のせいで、国民の花粉症の被害がひどくなりそうだ」と予測しておこう。   (^^);
( ※ 高速道路無料化のせいで、渋滞と交通量増加により、ディーゼルの排ガスが増えるから。)


● ニュースと感想  (8月03日)

 「日産の電気自動車」について。
 日産の電気自動車「リーフ」が公開された。
   → 日産のサイト (重い)
   → 紹介記事(デザイン・写真)
 思ったよりも、ずっとカッコいい。ティーダやキューブとは全然違いますね。日産らしくない。屈指のデザインとされるトヨタのプリウスと比べても、遜色がない。内装では、上回っているぐらいだ。
( ※ 日産のサイトでは、スペックも公開されている。全長 4445 、全幅 1770 、全高 1550 mm 。プリウスは 4460×1745×1490 mm 。後席の居住性は、プリウスよりも格段に上だろう。)

 このデザインは、なかなかいい、と思う。プリウスに比べて、インサイトはクーペふうのスタイルになったが、リーフは逆に乗用車ふうになっている。つまり、空気抵抗を減らすことを第一目的とせず、実用性や居住性を重視している。……街中での利用を考えれば、当然のことではあるが、まともな方針だ。
 それに比べると、インサイトはひどいね。4ドア・クーペなんて、ほとんど意味がない。また、昔の2ドア・クーペのインサイトは、もっとひどかった。
 リーフは、プリウスよりも、乗用車的だ。この点では、大いに賛美したい。特に、それでいながら、プリウスよりもカッコいいぐらいだ。日産としては珍しいヒットとなるデザインですね。
 これなら世界各国で多大な販売を予定するのも納得できる。けっこう売れそうだ。デザインだけでも、買う価値がある。また、電気自動車の乗り味は、(振動がないので)ロールスロイスにも匹敵する(かも)。……その意味で、「小さな高級車」となるので、金を払う価値が出てくる。(プリウスも同様だが。)

( ※ デザインはいいが、ただし、鼻だけは、いただけない。給油口みたいなものが付いているが、何でしょうね、あの汚らしいのは? あ、日産のマークだ。缶の蓋みたいだけど。)

 [ 付記1 ]
 あとで思ったが、このデザインは、ルノー・チームのデザインだろう。ルノーっぽいんですよね。そう思いませんか?
( ※ ただし、あとで調べたところでは、デザインは全部日産チームで、デザイナーはムラーノのデザイナーだ、とのこと。 → 英語サイト 。The elongated but curiously bulbous headlamp assembly (designed for looks and airflow, said Shiro-san) extremely short nose (no engine to hide) and sharply delineated flanks and wheel cutouts are all Nissan, showing a little bit of the styling that went into the Murano crossover utility vehicle ― no shocker when you learn that the Leaf's chief designer also headed the Murano design team, according to Nakamura.)

 [ 付記2 ]
 日産は頑張った。ただし、である。
 民主党は、ガソリン税の税率を、大幅に下げようとしている。これでは、電気自動車のメリットが、激減してしまう。となると、ガソリンの高い欧州では電気自動車が普及して、ガソリンの安い日本では電気自動車が普及しない、というふうになりかねない。
 民主党のアホさ加減には、呆れはてる。レクサスみたいなガソリンがぶ飲みの車を免税・減税にするぐらいだったら、電気自動車の推進のために金を使えばいいのに。その逆。ちょっとだけガソリンを食うのがへったからという理由で、ガソリンがぶ飲みの車を援助する。狂気的。
 で、その分、レジ袋の節約で、何とかしようという魂胆らしい。で、レジ袋、何枚? いちま〜い、にま〜い。……怪談ですね。


● ニュースと感想  (8月03日b)

 「民主党はなぜダメか?」について。
 前日分では民主党を批判したが、民主党はなぜダメなのか? そのわけは? ── そう考えて、思い当たった。ダメなのは、小沢のせいだ。小沢が選挙対策という名分で、あれこれと票の買収政策を取る。その延長上に、一蓮托生みたいな鳩山がいる。一方、菅直人は、昔から環境保護派だ。
 となると、小沢(の秘書)が起訴されて、鳩山が幽霊献金で国会証人喚問されて、どっちも表舞台から去ってくれれば、菅直人が党首になる。それで民主党の買収政策が消えてしまえば、それがベストかも。
 菅直人が先の代表戦に立たなかったのは、菅直人が小沢に「辞任しろ」と迫ったから。小沢をやめさせて、自分が立つ、というわけには行かなかったんだろう。
 また、菅直人が前に党首を辞めたのは、女性問題が発覚したから。ただしこれは、プライバシーの問題であって、政治家としての問題ではない。よく考えると、このプライバシー問題は、個人情報保護法の対象になるかな? という気もしたが、データベースに入っていないから、そうはなるまい。とはいえ、今みたいにプライバシーや個人情報にうるさい時代になると、たとえ政治家であれ、プライバシーをやたらと暴露するのは問題だ、と言える。菅直人の場合、不倫したとしても、不倫は違法行為ではない。今はもう姦通罪はないからだ。また、奥さんが免責している以上、他人が口を挟む必要もない。……その上、今では、時効だろう。  (^^);
 それにしても、男女問題でやたらと騒ぐと、ろくなことはない。菅直人が表舞台から去っていた間、(政治家の人材不足のせいで、)日本の政治状況は最悪になってしまった。下らない不倫問題に騒いだせいで、日本全体が破壊される……というありさま。まったく、何やっているんだか。

 たとえ話。
 妻 「あなた、このケータイ・メール、何よ! 浮気しているのね!」
 夫 「ごめん、たしかに浮気しました」
 妻 「頭来た! すべてぶちこわしてやる!」
  → 家に放火して、全焼。夫の財産は灰となったが、妻もまた乞食になる。
   ( or 妻の告げ口で、夫は会社をクビになり、妻もまた路頭に迷う。)

 この「妻」とは、日本国民のこと。


● ニュースと感想  (8月03日c)

 「自由主義と福祉主義」について。
 自由主義(自由経済主義・市場原理主義)に対抗する形で、福祉主義というものが出てくる。これは、小泉の構造改革に対するアンチテーゼとして、民主党が唱えているものであるようだ。(はっきりと口に出してはいないが、おおむねそんな感じ。)
 ただし、である。民主党の福祉主義とは、本当の福祉主義ではない。その違いは、次のように現れる。
  ・ 本当の福祉主義 …… 恵まれない人々に福祉を施す。
  ・ 偽りの福祉主義 …… 自分が国家から金をもらう。
 前者は、「与える」ことが原理だが、後者は、「もらう」ことが原理だ。簡単に言えば「乞食主義」である。
 そして、それが、今の民主党の唱えている政策だ。マニフェストでは、「あれも上げます、これも上げます」と大盤振る舞いをしているが、それは国民にとっては乞食主義に当たる。
( ※ バラマキの金をもらう、というようなものか。昔、建物の新築のときに、現金をばらまいて、人々に恵んでやる、という風習があったが、そのバラマキに似ている。 → 建前・棟上げ・上棟式最近の例

 8月2日の「行列のできる法律相談所」で、カンボジアの恵まれない人々のために奉仕する、という話があり、なかなか感動的だった。これは「恵まれない人のために奉仕する」というもので、「バラマキの金をもらう」というのとは正反対だ。
 世の中には、「福祉とは(他人に)与えることだ」と考える人がいる一方で、「福祉とは(自分が)もらうことだ」と考える人がいる。高貴な人がいる一方で、乞食のような人がいる。
 そして、乞食相手にバラマキの政策をして、票を買収しようとしているのが、民主党だ。まったく、情けない。


● ニュースと感想  (8月04日)

 インフルエンザよりは、結核について着目するといい。結核では、毎年2万人以上の感染で、2千人以上の死者が出る。
  → Open ブログ 「インフルエンザより結核」


● ニュースと感想  (8月04日b)

 「最初の一撃・最初にドカン」について。
 前出の nando ブログ 「景気回復の方法は? (総需要の拡大)」 の最後に、以下の記述を加筆しました。
 (7)
  → 最初にドカン最初の一撃
 中和政策で減税をする際、少しずつ小出しにするべきではない。むしろ、最初に大規模減税をして、その後は減税をやめるべきだ。10兆円ずつ3年間やるよりは、30兆円を一挙に出すべきだ。(最初に出したら、それ以後は出さない。)
( ※ 少しずつ小出しにすると、景気回復効果がないまま、その金のすべてが無駄に消えてしまうこともある。……日本がこの 18年間に取ってきた政策は、それである。)
( ※ 病気のときの薬も同様だ。薬が有効になるには、一定の有効量以上を服用する必要がある。有効量に満たない薬を少しずつ取ると、病気が治らないまま、いつまでもずっと病気のままとなる。その間に取った薬の累積量は多大になってしまう。)
 このことは大切だ。というのは、民主党は、これとは正反対の政策を取っているからだ。
 子供手当であれ、農家への所得補償であれ、高校無料化であれ、高速道路無料化であれ、ガソリン税減税であれ、これらはいずれも「恒久的な措置」である。つまり、「その年限りの措置」ではない。
 これは、「薬を少しずつダラダラと飲み続ける」という政策だ。しかし、病気のときに大切なのは、「病気のときには回復に必要な量を飲み、病気が治ったら薬をやめる」という服用法だ。
 景気で言えば、景気悪化の真っ盛りには大規模な減税が必要だが、それ以後は、経済波及効果に任せればよく、毎年の財政措置は必要ない。
 比喩的に言えば、大ききな  を動かすには、最初に大きな力を加えれば良く、あとは惰性に任せるだけでいい。いったん動き出したあとでは、そのあともさらに力を加える必要はないのだ。

 民主党の政策は、次の二点で難点がある。
  ・ 最初の年に不況の底から脱するには、力不足。
  ・ もし景気回復が成立したら、数年後にはインフレが起こる。そして、そのとき、それまでの政策を急にやめるわけには行かない。(何年も継続した子供手当を、いきなり全廃するわけには行かない。)かといって、消費税増税に頼るとしたら、一挙に大規模な消費税増税が必要となり、経済的に混乱が起こる。
 
 こういう問題をなくすには、「最初の年だけに限定」と断った上で、単発的なだ規模減税をするべきなのだ。それこそが正しい政策だ。民主党の政策は、不況対策としては貧弱だし、また、将来のひどいインフレを招きかねない。下手をすると、巨額の財政赤字が降りかかって、一挙にハイパーインフレになりかねない。
 「不況でも好況でも、ずっと減税し続ける」というような政策は、狂気の政策なのである。甘いことばかりを言っている民主党の政策は、国を滅ぼす経済政策だ。

 [ 付記1 ]
 小泉は構造改革で日本を不況のどん底に落としたが、民主党は将来的に日本をハイパーインフレに落とし込む。下手をすると、国債を償還できなくなり、国家破綻になりかねない。アルゼンチンみたいに。
 ま、それほどひどくはならなくとも、異常な物価上昇で国家経済が麻痺したアルゼンチンの状態は、民主党政権の描く未来に近い状態だ。
 小泉は低体温の病人をさらに低体温にしたが、民主党は低体温の病人に覚醒剤を過度に注射して、病人を活気づけすぎて暴走させて死なせてしまうだろう。小泉の政策は、民主党の政策よりは、まともだったかもしれない。というのは、日本はいくらひどい状態になっても、破綻していないからだ。一方、民主党政権になれば、日本は破綻しかねない。
 甘い言葉ばかりを口にする政治家ほど、危険なものはないのだ。「働かなくても金をどんどん上げます」と言う民主党に比べれば、「ちゃんと働け」と言った小泉は、はるかにマシだった。

 [ 付記2 ]
 以上に述べたことは、次のことと等価である。
 「民主党の政策には、財源の裏付けがない」
 大量の金をばらまく政策をしているが、その財源がない。そして、財源がないということは、単に「帳簿がきれいにならない」ということを意味するのでなく、「赤字国債でまかなう」ということを意味する。そして、それは、景気回復がろくに起こらないまま、毎年毎年、どんどん継続することになる。……それがつまり、「ハイパーインフレによる国家破綻」だ。「財源がない」というのは、「ハイパーインフレによる国家破綻」を意味するのだ。
 一方、「最初にドカン」ならば、その問題はない。インフレは最初の年にかなり大規模に起こるだけだ。ただし、最初の年は、もともとデフレ状態だから、差し引きして、あまり大きなインフレにはならない。(もともと大きな需給ギャップがあるから。) そして、二年目以降では、需要拡大と物価上の効果で、生産量がどんどん増加していく。生産量が増加すれば、自然増収の形で、自然に増税の形となる。財政は自然に健全化していくし、インフレは自然に収束していく。(いわゆる「ビルト・イン・スタビライザー」の効果。)
 民主党のような政策は、「ビルト・イン・スタビライザー」とは逆の効果をもたらす。景気を安定させるのとは逆に、景気を不安定にする。不況時には景気拡大効果が少なめであり、そのくせ、いったん景気回復が起こると、それを加速して、インフレからハイパーインフレへと導く。……ただし、口先だけはとても甘くて、人々に「お金をたっぷり上げますよ」と口にするのだ。(その原資が国民の金であることを隠したまま。というか、その原資は赤字国債であり、それが将来の破綻をもたらすことを隠したまま。)

 [ 付記3 ]
 たとえ話。
 あなたは素敵な美人と結婚した。「家計はきみに任せるよ」と言ったら、美人妻は毎日素晴らしいごちそうを作ってくれ、あなたの身なりは高額なブランド品ばかりをそろえてくれた。あなたは大喜び。ところが、あるとき、貯金通帳を見て、あなたは青ざめた。数千万円もあった貯金が残額ゼロになっている! 自宅は借金の抵当に入っている! さらにはクレジットカードやサラ金などの請求書が山のように溜まっている! ……すべては「借金」の形で浪費されてきたのだ。
 これが民主党の政策だ。「財源がないのに贅沢をする」というのは、「借金まみれになる」ということだ。


● ニュースと感想  (8月04日c)

 「裁判員制度」について。
 裁判員制度が始まった。読売新聞は「各人の良識に期待する」と述べたが、それは虫が良すぎる。
 そもそも、やりたがらない人に無理やりやらせて、「ちゃんとやってくれ」と期待するなんて、人間心理を無視している。たとえると、「あなたとは結婚したくない」と言い張る女と無理やり結婚しておいて、「結婚したからにはおれを愛してくれることを期待する」というようなものだ。虫が良すぎる。
 では、どうすればいいか? 簡単だ。「やりたい人だけがやる」というふうにすればいい。
 例。候補者として、少し多めの 200人を抽選で選ぶ。各人に「やりたいか、やりたくないか、どちらでもないか」を問い合わせる。「やりたくない」と応えた人には、理由のいかんを問わず、やらせない。残りは、やりたい人のなかから選んでもいいし、どちらでもいいと応えた人のなかから選んでもいい。
 一般的には、「やりたい」と答えた人の方が、意欲があるから、信頼がおける。「どっちでもいい」と答えた人には、信頼がおけない。あえてやらせる必要はない。

 私の予想。
 「やりたくない」と思っている人が、今回は、かなり選任されたようだ。当然、彼らは、次のように思うはずだ。
 「一日でも早く、討論を終えたい。そこで、自分としては、何も意見を言わない。あくまで多数派にしたがって、結論が出るのを早める」
 こういう人が多くなると、次のようになる。
 「強い態度をもつ人が一人か二人いて、その人が有罪または無罪の判決を勝手に選ぶ。そのあと、他の人々は、付和雷同で同意する。結果的に、強い態度をもつ一人か二人に、判決が大きく左右される」
 つまり、「偶然に大きく依存する」ということだ。これはつまり、「コインを投げて有罪か無罪かを決める」ということに近くなる。とすれば、「各人の良識に期待する」というのとは正反対の結果になる。
 今の裁判員制度なんて、そんなものだ。くだらない。……そして、それを是正するにはどうすればいいかを、本項では示した。(やりたい人だけがやる、ということ。……それによる偏りは出るとしても、有罪か無罪かという偏りとは別だから、特に構わない。)


● ニュースと感想  (8月05日)

 「裁判員制度と確率的なムラ」について。
 裁判員制度の意義は、裁判員を「広く国民から無作為に選ぶ」ことだという。専門の際場間に任せていたのを、国民に広く開放する、という狙いのようだ。
 なるほど、もっともだ、と思えるかもしれない。しかしここには、問題がある。「確率的なムラが生じる」ということだ。
 そもそも、基本からして、勘違いがあるようだ。「広く国民から無作為に選ぶ」ということは、「広い範囲の人々を選任する」ということではない。「広い範囲の人々から、偶然の形でランダムに選ぶ」ということだ。当然ながら、ランダムさには、公正さよりも、偏りが生じることがある。
 たとえば、次のようなことが起こる。
  ・ 全員が女性ばかりである。
  ・ 全員が 20代の若者ばかりである。
  ・ 全員が被害者と同じ職業である。
  ・ 全員が加害者と同じ職業である。
 こういうことは、確率的には、ある程度の割合で必ず発生する。たとえば、1%〜5%ぐらいの割合で。(サイコロを4回振って、1ばかりが出る、というようなもの。確率はゼロではない。)
 だから、世論調査のような統計調査では、この偏りをなくすために、「層化2段抽出法」という方法を取る。つまり、あらかじめある程度グループ分けしてから、それぞれのグループ内でのみ無作為抽出する。
 裁判員制度でも、このような方法を取ればいいのだが、現実には、そうなされていない。個別の裁判のたびに、検察側または弁護側の「忌避」の形でのみ、偏りをなくす努力がなされるだけだ。
 ま、それでいくらかは問題は回避されるが、それでも偏りがちゃんと消えるわけではない。というか、そもそも、偏りを消すことは、困難だ、と考えた方がいい。
 要するに、「広く国民から無作為に選ぶ」ことによる公正さは、もともと確保されていないのである。「無作為抽選がベストだ」ということは、成立しないのだ。
 だから、その基本方針を、変更した方がいい。むしろ、「まともな裁判員をきちんと選ぶ」という方針にした方がいい。
 
 結論。
 「無作為抽選だから公正だ」ということは成立しない。なぜなら、それぞれの裁判では、たった6名の裁判員しか選ばれないからだ。そこにあるのは、「公正さ」というよりは、「偶然的なムラ」である。とすれば、強い偏りが起こることが、頻繁に起こる。とすれば、公正でないような選任が、非常に多く発生する。それは問題だ。
 だから、「無作為抽選だから公正だ」という発想を捨てて、最初から「なるべく公正な選任をしよう」という発想を取るべきだ。基本的には、ドイツのように、し専門の担当者を短期的に選任する(市民の間から選ぶ)、ということの方が好ましい。
 たとえ話。
 玉石混淆の人たちがいる。バカも利口もいる。この中から、どう選ぶと、最善の選び方ができるか? 
 案1。「サイコロで偶然的に無作為抽選するのが最善だ」
 案2。「適した人をきちんと選考するのが最善だ」
 どちらがいいか? もちろん、後者でしょう。

 裁判員制度という理念そのものはいい。専門の裁判官に任せず、市民に開放する、という方針はいい。しかし、だからといって、「無作為抽選」というのは、話が乱暴すぎる。そして、その根底にあるのは、「無作為抽選ならば公正だ」という発想だ。実際には、「無作為抽選にあるのは偏りだ」ということを理解できていない。統計的な知識をわかっていない。
 この意味で、今の裁判員制度は、きわめて歪んだものである。そこでは、玉石湖運行で選任されるが、現実には、「立派な人ばかり」ということも、「ダメな人ばかり」ということも、どちらも確率的に発生する。……そういう頭の悪い制度になっている。

 [ 付記 ]
 他にも、問題がある。
 (1) やりたい人だけがやる方がいい。(前項)
 (2) 選任されない参加者が、選任された参加者同様、4日間も休みを取るのは不合理。これを解決するには、誰が選任されるかを、当日に抽選するのではなく、1週間前に抽選すればいい。裁判員6名と補欠3名が選任されるのだから、この9名だけが4日間の休みを取ればいい。なのに、現実には、候補者である70人ぐらいがそろって4日間の休みを取る必要がある。そして、選ばれなかった 60人ぐらいは、会社に行くこともなく、裁判所に行くこともなく、自宅で遊んでいるしかないのだ。……無駄。この点でも、今の制度は、頭が悪すぎる。

 要するに、今の制度は、理念ばかりが先走っており、現実性の面で、非常に馬鹿げた制度となっている。理念馬鹿。
 思い出すのは、「法科大学院」という制度だ。これも、理念ばかりが先走って、現実には制度が崩壊しつつある。「法科大学院ができれば優秀な裁判官ができる」という理念だったが、現実には、「法科大学院ができれば優秀な裁判官ができなくなった」というふうになりつつある。……この問題は、法科大学院についての報道があちこちにあるから、そちらを参照。本項では述べない。


● ニュースと感想  (8月05日b)

 「薬物中毒」について。
 合成麻薬(ラブドラッグ)を使った押尾容疑者の弁明。
 押尾容疑者は、取り調べに対し、「固形物をもらったことは間違いありませんが、違法なものだとは思っていませんでした。きのう、知人からもらった」と話しているという。
 これはつまり、「合法的なヤクだと思っていました」ということ。「これを飲むと、ハイになれて、セ***が高感度になりますが、合法的なヤクだと思っていました」ということ。
 脳ミソが破壊されてしまったようだ。正常な思考能力が喪失している。ヤクの影響か。

 [ 付記 ]
 それを言うなら、日本中が狂気だろ? ……という見解も成立しそうだ。  (^^);
 そいつが肝心のことか。ハイになりすぎている。

( ※ オマケ。酒井法子の夫まで覚醒剤で逮捕された。のりピーも、矢田亜希子も、美女は災難続き。ヤクは蔓延している。 → 記事


● ニュースと感想  (8月05日c)

 「最近の景況」について。
 6月の景況は、非常に悪い。労働者の給与は、昨年比で、大幅減。
 今年の春ごろには、「今が底で、夏や秋には回復するだろう」という予想が多かった。私は批判したが。
 まったく、多くのエコノミストは、何を考えているんだか。勝手に楽観視している。「未来は今より良くなる」と。
 薬物中毒みたいな発想だ。

 [ 付記 ]
 現況は? エコ補助金の出る自動車や家電では、一部、持ち直している。しかしこれは補助金による一時的な効果にすぎない。需要の先食いみたいなもの。
 基本的には、総所得が増えないと、総需要は増えない。その総所得が、上記のようなありさまだから、現状は景気回復からはほど遠い。
 補助金を使えば、その産業は回復するが、国全体が回復するわけじゃない。国全体を回復させるには、総需要を増やすことが必要で、そのためには、特定産業のために補助金を出すのでなく、国全体で総所得を増やすしかない。……大規模減税ならばその効果はあるが、エコ補助金なんかは全然ピンボケなのだ。
 この意味で、政府・自民党の方針は、ダメ。民主党の方針(子育て向けのバラマキ)の方がマシ。ただし、民主党の「ガソリン減税」は、政府・自民党よりも、もっと悪い。自動車を増やすのでなく、ガソリン消費を増やす。狂気の沙汰。


● ニュースと感想  (8月05日d)

 「賃金を引き上げると、失業が増える」(だから最低賃金の引き上げはダメだ)、という見解がある。古典派経済学者は、そう主張する。だが、それは間違いだ。
  →  nandoブログ 「賃上げと失業」


● ニュースと感想  (8月06日)

 太陽光発電は、電力が安定しない。天候により出力が大きく変動するからだ。  そこで、これを解決するために、送電網で変動を吸収しよう、という案がある。(スマート・グリッド)……しかし、そんなうまい話は成立しない。
  → Open ブログ 「太陽光発電と電力安定」


● ニュースと感想  (8月06日b)

 前日の  nandoブログ 「賃上げと失業」 の最後のあたりに、次の話を加筆しました。短いので、転載します。
 以下、転載。

 [ 付記3 ]
 「最低賃金を引き上げると、中小企業がバッタバッタと倒産する」
 という批判は、かなり大げさで、現実には成立しそうにない。
 第1に、中小企業といっても、たいていの製造業は、技能労働者を雇用しているから、最低賃金よりもずっと高い金を払っている。それらの企業は、最低賃金引き上げの対象とはならない。
 第2に、最低賃金の具体的な対象となるのは、アルバイトのレジ係みたいな、単純労働者である。そして、そのような単純労働者を雇用するのは、中小企業とは限らない。大手スーパーもあるし、コンビニもある。いずれも、時給 700円程度。(民主党の言う「最低賃金を 1000円に引き上げ」の対象となる。)……このような単純労働者は、どうなるか? 中小企業が倒産することはあるだろうが、どうせ販売力の弱い一部の販売業(小売店)だけだ。そんなのは倒産しても構わない。
 一方、大手スーパーやコンビニは、全然問題ない。なぜか? 最低賃金を引き上げれば、「全企業で最低賃金の引き上げ」となるからだ。……この点が重要なので、注意。たとえば、ジャスコのアルバイトだけが時給 1000円になれば、ジャスコは倒産するかもしれない。しかし、ジャスコもヨーカドーも、はたまたガソリンスタンドも、日本中のあらゆる企業について時給 1000円になれば、どの企業も不利にならないから、どの企業も倒産しない。単に各企業で商品の値上げが起こるだけだ。(コスト・プッシュ・インフレ)
 というわけで、
 「最低賃金を引き上げると、中小企業がバッタバッタと倒産する」
 という批判は、成立しないわけだ。現実に起こるのは、
 「一部の零細小売店が倒産して、レジ係が失業するが、その人は、他の大手企業で雇用される。その結果、それまでの時給 700円から、今度は時給 1000円になる」
 というふうになるわけだ。なるほど、その人は、失業する。しかし、失業しても、もっと高い賃金で雇用される。……これはまあ、「創造的破壊」みたいなものだ。駄目な企業は倒産してもいいのである。
( ※  ただ、だからといって、「最低賃金を引き上げても全然問題ない」と言っているわけではない。現実には、いくらか失業増加の効果はあるだろう。)

 [ 付記4 ]
 とはいえ、「最低賃金の引き上げはダメだ」ということにはならない。なぜか? もしその主張が成立するなら、次のことを主張しなくてはならない。
 「失業を解消するために、最低賃金を大幅に引き下げるべきだ」
 現状では、時給600円程度が最低賃金だ。しかし、失業をなくすことを目的とするならば、最低賃金はゼロ近辺にする必要がある。いや、実を言うと、ゼロでもダメだ。マイナスにする必要がある。というのは、均衡点は「賃金がマイナス」の点にあるからだ。(「流動性の罠」という現象。)
 例1。米国の金融危機で、自動車の需要が急減したとき。このとき、労働者を賃金ゼロにしても、自動車の需給を均衡させることはできない。労働者から 20万円ぐらいをもらって、その 20万円だけ新車価格から割り引かないと、需給は均衡しない。
 例2。日本の小麦の生産性は、海外に比べてものすごく低い。海外の小麦と対抗するには、日本の農家の賃金をゼロにするだけではダメで、日本の農家から補助金を徴収して、原価以下で販売する必要がある。(そうしないと海外の自由市場で対抗できない。)
 ともあれ、ひどい不況下では、次のことが成立する。
 「失業を解消するために、最低賃金を大幅に引き下げるべきだ」
 ただしこれは、「労働市場の需給曲線だけで考える」という古典派的な思考を取った場合だ。逆に言えば、古典派的な試行を取る限り、上記のような馬鹿げた結論になるのだから、古典派の思考に従うべきではない。つまり、「最低賃金を引き上げると、失業を増やすから、最低賃金の引き上げはダメだ」と考えるべきではない。そのような発想そのものが、ピンボケなのである。


● ニュースと感想  (8月07日)

 Firefox と Chrome 、どちらも最新版が公開された。
  → Open ブログ 「 Firefox と Chrome」


● ニュースと感想  (8月07日b)

 「核使用を推進する日本」について。
 「広島や長崎に核爆弾を落としたのは正しかった」という説がある。「そのことで何十万人もの命が救われたからだ」という趣旨。
 これはどういうことかというと、次のことを意味する。
 「米国人の兵士について、何十万人もの命が救われることが大切だ。一方、日本人の民間人については、何十万人もの命が奪われても問題ない」
 これは、アウシュビッツの虐殺を正当化するのよりもタチが悪いと思えるが、別に、そうではない。ただの人種差別にすぎない。
 「米国人の命は人間の命。日本人の命は猿の命。米国人が十万人死ぬのは問題だが、猿が十万匹死ぬのは問題ない。十万匹の方は人の命には数えない」
 というもの。
 なるほどね。

 また、実を言うと、「何十万人もの命が救われた」という話自体も、かなりインチキがある。というのは、日本は当時、米国領土を侵略していなかったからだ。日本が米国人を殺そうとしていたわけではない。米国人が日本人を何百万人も虐殺しようとしていた。それをやめれば、米国人は一人も死なないで済んだ。(なぜなら日本は当時、条件降伏を申し出ていたからだ。「国体を護持すれば降伏する」というふうに。米国がそれを呑めば、一人も死なないで済んだ。)
 実際には、米国はそうしなかった。何百万人も虐殺しようとしていた。その際、抵抗を受ける。何百万人も虐殺しようとして、無傷というわけには行かず、何十万人かが死ぬ。そこで、その抵抗を抑制するために、原爆を落としたわけだ。……ここでは、「何十万人かの命を救う」ということの意味を取り違えないようにしよう。
 比喩。警察がマフィアを襲撃した。そのままマフィアが降伏すれば警察は被害なしで済むが、マフィアが抵抗すれば、警察に死者が数人出る。そこで、警察の数人の被害をなくすために、マフィアのいるNYビルを爆破した。そのことで、NYビルにいる1万人の民間人がみんな死んでしまった。それでも警察は誇った。「マフィアのいるビルを爆破したことで、警察の死者を数人減らした。これは正しいことだった」と。(なぜなら、警察官以外の人々は、人にあらず。一般市民なんて、猿にすぎないからだ。猿の命なんか、どうだっていい。)

 というわけで、米国人の原爆正当化は、あまりにもナンセンスである。……と、ここまでは、よくある話。肝心の話は、このあとだ。
 これを聞いて、「馬鹿げた米国人」と思うのが普通だろう。ところが、この米国人の方針を支持して、「まさしくその通り。日本に原爆を落としたのは正しかった」と思う日本人がいる。誰か? 実は、日本政府そのものである。日本政府は、その方針を取る。
 朝日の社説から引用しよう。
 日本政府は、米国による核先制不使用宣言には慎重だ。北朝鮮は核実験しただけでなく、生物・化学兵器も持っている可能性がある。その使用を抑えるために、核先制使用も選択肢として残すべきだ、という立場だ。
( → 朝日・社説 2009-08-06 )
 つまり、「生物・化学兵器に対する反撃策として、核兵器を使用する」という方針だ。しかし、これは、次のことを意味する。
 「戦闘員の間の攻撃に使うだけの生物・化学兵器に対する反撃策として、一般国民のいる都市を破壊する核兵器を使用する
 つまり、
 「こちらから先制して、一般国民の大量虐殺をする」
 これはちょうど、広島・長崎の原爆投下をした米国の方針と同様だ。
 たとえば、日本と米国が北朝鮮に侵攻して、北朝鮮が壊滅状態になったとする。北朝鮮は「金主席の尊厳を守れば降伏する」と申し出たとする。しかし日本と米国は無条件降伏を要求する。しかし北朝鮮は認めない。そこで日本と米国は、攻撃を継続するが、その際、攻撃中に、北朝鮮は生物・化学兵器を使って、抵抗するかもしれない。もちろん、日本と米国が、北朝鮮の条件降伏を呑めば、問題ないのだが、それを呑む気はない。生物・化学兵器の使用が怖い。そこで、どうするか? 日本は主張する。「生物・化学兵器の使用が怖いから、核爆弾を落とせ」と。「それによって、日本人の死者を何十万人も減らせる。こちらの兵士の死者を減らすことが大事だ。北朝鮮の一般市民が何十万人も死んだって、構うものか。連中は猿なんだから。猿の命なんか、救う必要はない」
 これが日本政府の方針だ。こうして、日本政府は、核兵器による一般市民大虐殺を容認する。……つまり、広島・長崎の大虐殺は正当だった、と認めることになる。
 これが今の日本政府の方針だ。

( ※ つまり、「核兵器を先制使用したい」という身勝手な論理を取るから、「核兵器を先制使用された」という相手の身勝手な論理にねじふせられてしまう。身勝手な論理が、ブーメランのように、自分自身に降りかかる。そういうこと。)

( ※ だから、日本政府は、「核兵器を先制使用したい」という身勝手な論理を取るべきではない。……それが結論。本項では、反語ふうに述べた。)


● ニュースと感想  (8月08日)

 「核廃絶を求めるべきか?」について。
 核廃絶を求める方針がある。昔からあるが、最近も、オバマ大統領や民主党代表などがこの方針を唱えている。この件に関して、私の考えを述べる。
 まず、核廃絶は、理想としては好ましい。だから、これを理想として唱えること自体は、問題ない。ただの夢だからだ。
 ただし、夢でなく現実としてはどうか? 核廃絶は、現実には不可能だ。たとえ世界中の国が「核廃絶」を唱えても、どこかの誰かがこっそり核爆弾をつくることは可能だからだ。特に、イスラエル。この国は、世界のなかで唯一、核爆弾を保有していることを隠している。(他の国は、持っていないか、持っていれば隠さない。)(ついでだが、イスラエルの核爆弾は、よそのウランをシージャックして盗み取ったものだ。この件は、詳しくは述べないが。)
 というわけで、どこかの悪党であれ、イスラエルという悪党であれ、核を保有することをやめない。あるいは、新規に開発できる。とすれば、「核廃絶」は、現実には不可能なのである。そして、現実に不可能なことを唱えるのは、夢想にはなるが、政治にはならない。(政治は夢でなく現実を扱う。)

 では、現実に可能なのは? 
 まず思い浮かぶのは、「核兵器の軍縮」である。核拡散防止条約や、交渉による軍縮。ま、これはこれで、誰もが考えることだ。

 ただ、私としては、前日分の記述を参考とした上で、次のことを提唱したい。
 「核兵器の先制不使用」
 日本は現在、「核兵器の先制使用」を支持している。(前項参照。米軍に守ってもらう形で、米国が北朝鮮に核兵器の先制使用をすることを支持している。)
 これに対して、北朝鮮の取る方法は、ただ一つ。時刻による核兵器の開発だ。これのみが、日米による核兵器の先制使用に対抗できる。
 換言すれば、北朝鮮に開閉器の開発を促しているのは、日本の「核の先制使用」という方針なのである。
 つまり、「核の先制使用」という方針は、核兵器の拡散を招く。とすれば、ここまで考えれば、「核の先制使用」を禁止することが有益だ、とわかる。

 ただし、「核の先制使用」は、各国が自主的に唱えるだけでは、実効性がない。いつ前言をひるがえすかもしれないからだ。
 そこで、それを実質的に禁止する方法を示す。こうだ。
 「核の先制不使用同盟、という同盟を形成する。この同盟国に対して核の先制使用をした国(A)があれば、その国(A)に対して、他の同盟国(A以外)は、その国(A)に対して、一斉に報復攻撃をする」

 例1。日本がこの同盟に入っているとする。北朝鮮が日本に対して核の先制攻撃をしたら、他の同盟国が一斉に日本に報復攻撃をする。(北朝鮮に核を何十発もお見舞いする。)……このことで、日本に対して核の先制攻撃を抑止する。
 例2。北朝鮮がこの同盟に入っているとする。日本や米国が北朝鮮に対して核の先制攻撃をしたら、他の同盟国が一斉に日本や米国に報復攻撃をする。(日本や米国に核を何十発もお見舞いする。)……このことで、北朝鮮に対して核の先制攻撃を抑止する。そのことで、北朝鮮は、核兵器の自主開発が必要なくなる。(自分で核兵器を開発しなくても、他の国が核の先制攻撃を抑止してくれるからだ。)

 というわけで、「核の先制使用をやめること」が大事であり、そのために、「核の先制不使用同盟」というものを形成することが大事である。
 そして、これは、「核廃絶」という夢物語とは異なり、将来の核戦争を防止する現実的な案なのだ。

 結語。
 核兵器について大事なのは、「存在」をやめることではなく、「使用」をやめることだ。存在をやめさせることは、無理だが、使用をやめさせることは、可能だ。そのためには「先制使用への報復」という形を取ればいい。そのためには、核兵器が存在していることが必要だ。
 核兵器があればこそ、「使用」をやめさせる制度が可能となる。その制度を確立することが知恵というものだ。それは「廃止」を狙う夢想とは異なる。大切なのは、夢想よりも、知恵だ。

 [ 付記1 ]
 「核の先制使用をやめること」や「核の先制不使用同盟」というものは、他の誰かも主張しているだろう。いちいち調べないが、わりと平凡な案だからだ。(調べたら、Wikipedia 「核抑止」にも説明があった。)
 本項の意図は、そういう案を提唱すること自体ではなくて、「核廃絶よりは、先制使用の禁止の方が大事だ」というふうに、「核廃絶」との間で軽重を付けることである。
 つまり、「核廃絶、核廃絶」と夢ばかり唱えていないで、現実的なことをやれ、という趣旨。政策の比較論。

 [ 付記2 ]
 なお、似た例に、次の比較がある。
 「銃器廃止」v.s.「銃器使用規制」
 前者は、「銃器をこの世から消滅させよう」という理想論。
 後者は、「銃器の使用を規制しよう」という現実論。
 前者ばかりを唱えていると、後者がおろそかになる。すると、アメリカのように銃が野放しになったまま規制されない、という状態が放置される。だから理想論にこだわるよりは、現実的な案を採るべし、と言いたいわけ。

( ※ 「夢より現実」という私の方針は、太陽光発電についても言える。世間の人々は太陽光発電の夢ばかりを見る。また、豚インフルエンザのときも同様で、政府やマスコミは「豚インフルエンザの水際阻止。ただの一人も侵入させない」という方針を取った。そういう非現実的な方針を取ることの愚を指摘するのが、私の態度だ。)


● ニュースと感想  (8月08日b)

 次期戦闘機は F-22 になる目がなくなったので、F-35 になりそうだ、という見解がある。しかし私としては、別の案を出したい。それは、ユーロファイター・タイフーンと国産機との合体による、新開発機だ。
  → Open ブログ 「次期戦闘機は F-35 か?」


● ニュースと感想  (8月09日)

 ステルス機よりも先進的なものを提唱する。それは無人戦闘機だ。ただし、単一の無人戦闘機ではなく、多数の無人戦闘機を共同で結ぶもので、「無人戦闘機システム」とする。
  → Open ブログ 「無人戦闘機システム」


● ニュースと感想  (8月09日b)

 「コスト・ダウン・デフレ」について。
 「コスト・アップ・インフレ」(コスト・プッシュ・インフレ)という概念がちょっと話題になったので、ついでに述べる。
 高度成長期には、「コスト・アップ・インフレがあった」というふうに述べたことがある。これは、「労働コスト(賃金)の上昇が高度成長期のインフレの主因だった」というわけではなく、「いくらかは賃上げがインフレに影響があった」ということだ。
 これを逆の見方から言えば、次のようになる。
 「近年では、労働コスト(賃金)の上昇がなかったことが、近年のデフレの一因だった」

 具体的に言えば、こうだ。
 「 2002年ごろ、アメリカの好況にともなって、輸出増加が起こり、企業は黒字化した。当然、賃金を大幅に上げることができた。しかし、企業はその金を内部留保に回し、労組も(ストを打たずに)企業の方針を是認した。そのせいで、企業が大幅に黒字化しても、景気回復の芽は摘まれた。企業の利益は、内部留保という形で蓄積され、消費に回らなかったから、総需要が減少したからだ」( → 11月21日

 これは「コスト・ダウン・デフレ」(コスト・プル・デフレ)と呼べるだろう。企業が黒字化しても、賃上げがなければ、一国経済は縮小する。
 そして、ここでは、需給曲線なんかは関係なく、「所得の効果」というマクロ経済学の認識が大切なのだ。
( 「需要増加 → 生産増加 → 所得増加 → 需要増加 ……」というスパイラルは、所得の増加がなかった時点で、断ち切られる。これがマクロ経済学的な認識。)

 さて。以上のことを踏まえた上で、あらためて論じ直して、結論しよう。
 高度成長期のインフレは、コスト・アップ・インフレだったか? 典型的な意味でのコスト・アップ・インフレだったとは言えないが、半分ぐらいはそうであったと言える。
 つまり、「先に賃上げがあって、そのせいでインフレになった」という意味でのコスト・アップ・インフレではなかったが、「賃上げとインフレ率とがだいたい同じぐらいで毎年続いた」という意味でのコスト・アップ・インフレにはなっていた。
 仮に、賃上げがなかったとしよう。(当時の組合も今の組合と同じように軟弱で、労働者の組合参加率も今と同じように低くて、ストも今と同じように皆無だったとする。)その場合、会社側は、利益が大幅に上がっても、賃上げをしないで、内部留保に回しただろう。(2002年の場合と同様。)……すると、どうなったか? 賃上げがないのに、物価上昇だけはあるから、人々の実質所得は低下する。(これはここ数年の日本経済に似ている。日本の一人あたりGDPは世界のなかで急速に低下している。)で、その場合、人々の実質所得が低下するのにともなって、総需要も低下する。当然、インフレはなくなるし、高度成長もなくなる。
 
 というわけで、高度成長期には「賃上げ」が非常に重要であったわけだ。もしそれがなかったなら、高度成長経済は成立せず、それ以前の景気低迷が続いただろう。
 思い直してほしいのだが、高度成長期とは、「生産性が急速に上昇した時期」ではない。「所得倍増計画」によって、人々の所得が急激に増えた時期だ。ここでは所得が決定的に重要な役割を果たした。
 そして、成長の源泉は、「生産性が急速に上昇したこと」ではなくて、「半失業のような状態にあった余剰労働力が急激に活用されたこと」である。特に、農村の労働力が減り、商業や工業に移転したことで、農業以外の分屋で生産活動をする人々が急激に増えた。そのことで一国全体の生産規模は急激に増えた。そして、その理由が、「総需要の拡大」であり、そこでは「所得の増加」が決定的に重要だったのだ。

 結論。
 経済の成長とは、生産性の向上ではなく、余剰労働力の活用である。そのためには、総需要を拡大することが大事で、そのためには、総所得を拡大することが大事だ。
 このように、経済を所得の面からとらえることが、マクロ的には決定的に重要だ。一方、経済を需要と供給だけでとらえるのでは、物事の認識を誤る。(それが古典派の認識だ。)

( ※ 「そんな話は何度も聞いたぞ」と文句を言う人もいるだろう。ごめんなさい。実は、何度説明してもわからない人がいるので、そういう人向けの解説です。)


● ニュースと感想  (8月10日)

 「細川政権の裏話」について。
 細川政権が崩壊したのは、細川が勝手に政権を投げ出したのが理由だが、その背後に興味深い事実があったと判明した。
 一つは、消費税の大幅アップを一夜にして決めて、国民の大反発を食ったことだが、これには大蔵省の策謀があったという。
 もう一つは、(当時からわかっていたが、)補佐官の田中秀征が「さっさとやめちまえ」という思想の持ち主だったこと。
 朝日のインタビューから。(回顧録ふう。)
 ―― 細川さんは真夜中の記者会見で消費税に代えて税率7%の国民福祉税の導入を発表しましたが、すぐ撤回に追い込まれました。政権への打撃は大きかった。
 細川 内閣支持率の高さを利用しようという大蔵省の魂胆が、たしかにあったとは思います。私が福祉税の中身を聞いたのは記者発表の数時間前。与党で決めるというので、政府はほとんど関与していなかった。
 ―― 与党代表者会議で決めて、細川さんのところに持ってきた?
 細川 そうです。それもその日の夕方に。政治改革がずれ込んだあおりで本予算もできていなければ、補正予算も組めない。日米経済協議のための訪米も迫っていて、身動きとれない時期でした。国民に十分説明する時間がとれないまま、ばたばたと決められた。
 ―― 小沢さんと大蔵省の斎藤次郎事務次官が組んだとも言われましたが。
 細川 小沢さんだけじゃないでしょう。「霞が関」が与党代表者会議と一体になって攻めてきた。
 田中 そのころ、宮沢さんと3人で会うごとに、経済をどうするかの議論をしていた。内需刺激のための減税はやるべきだが、大蔵省が主張する増減税一体ではないだろうと。では、どうすればよいか、細川さんも苦悩していました。辞めるに辞められず、追い込まれていった。私は政治改革が実現した時点でいったん身を引いておけばよかったと、いまでも思っています。
( → 朝日新聞 2009-08-09
 そのあとの話を読んでもわかるが、細川には「パワー」がなかったようだ。そして、もう一つ。田中秀征という「マイナスのパワー」をもつ人間を側近にして、それのいいなりになってしまった面が強い。比喩的に言うと、細川は気の弱いオセロで、田中秀征はイアーゴーだ。本物イアーゴーみたいに悪意があるわけではなく、善意があるのだが、その善意が、殊勲をかえって滅ぼす。
 田中秀征でなく、弱気な夫を支える妻のような人物がそばにいれば、細川政権が崩壊することもなかっただろう。弱気な細川を鼓舞して、そのまま政権を持続させることができただろう。特に、上記のように、大蔵省がとんでもないことをしたのであれば、それを当時、明らかにするべきだった。なのに、そうしなかったから、細川が国民の矢面となり、非難を一斉に浴びて、政権を投げ出す結果となった。

 民主党が今になって自民党政権から取って代わろうとしているが、本来ならば、細川政権が持続しているだけで、そうなったはずなのだ。その間の時期に、日本は小泉の構造改革路線というメチャクチャな政策を取ったことで、経済が非常に悪化してしまった。
 もしあのとき、田中秀征という人物がそばにいなければ、日本という国は、その後、大幅に別の進路を取っていただろう。1993年、細川政権が誕生して以後、ずっと非自民政権が継続していたはずだ。そうなっていれば、日本経済もこんなに悪化していなかったはずだ。

 [ 付記 ]
 今にして思えば、バブル破裂直後の急激に悪化した経済のさなかで大幅な増税をしようとしていた大蔵省の方針には、あいた口がふさがらない。
 日本の官僚というのは、これほどにも愚かなのだ。経済が悪化しているさなかで、増税により目先の金を得ようとする。これはまあ、金を生むガチョウを殺して、腹から金を取り出そうとするようなものだ。
 日本経済はずっと経済音痴の連中によって運営されてきた。


● ニュースと感想  (8月10日b)

 (1)
 強毒性のパンデミックが将来的に危険視されている。ただし、「強毒性」とは、「強い毒性」のことではない。「強毒性」とは、「致死率が高い」ということだ。混同しないように。
  → Open ブログ 「強毒性と致死率」

 (2)
  パンデミックとは何か? この言葉の意味は、日本語と英語とでは異なる。日本では、世界標準とは異なる意味で言葉を使っているので、注意。
  → Open ブログ 「パンデミックとは」


● ニュースと感想  (8月11日)

 強毒性のインフルエンザの発生が心配だ、と懸念している人が多い。  だが実は、強毒性の鳥インフルエンザは、すでに発生している。(エジプトで。)
  → Open ブログ 「強毒パンデミック 1 (鳥インフル)」


● ニュースと感想  (8月12日)

 鳥インフルエンザ以外の形で、強毒パンデミックの発生はあるか?  具体的に言えば、スペイン風邪の再来はあるか? これについて論じよう。
  → Open ブログ 「強毒パンデミック 2 (歴史)」


● ニュースと感想  (8月12日b)

 「1票の格差」について。
 1票の格差がまた開いたようだ。
総務省が11日発表した今年の住民基本台帳人口(3月31日現在)をもとに、衆院小選挙区の「1票の格差」を朝日新聞社が試算したところ、格差が2倍超の選挙区が56となり、昨年より3増えた。地方から都市への人口流出が続いているため。最大格差も2.277倍から2.337倍と拡大した。
( → 朝日新聞 2009-08-11
 この問題については、私な何度も述べてきた。先に、「ドント式を原則にして、選挙区の合併を促す」という方針を提案した。( → 7月30日
 ただ、よく考えると、前にもっといい案を出しておいた。それは、「端数議席」(端数票)を認める、というものだ。つまり、1人1票でなく、1人2票にしたり、1人 0.5票にしたりする。その票数は、選挙区の人口に従う。
 たとえば、標準に比べて人口が2倍の議員は、1人2票。標準に比べて人口が 0.5倍の議員は、1人 0.5票。
 これなら、1票の格差の問題は完全に解決する。詳しくは下記。
  → 泉の波立ち 2004年7月14日b

 [ 付記 ]
 この方式のいいところは、いちいち選挙区の改定をしないでいいところ。特に、鳥取と島根は、(選挙区の合併をしないので)それぞれ独自の議員をもてる。票の重みは半分だが。
 
 票数の集計はどうするんだ、という質問もあるだろうが、昔はともかく今では電子投票がなされるので、特に問題はない。(無記名はしにくくなるが。)
 なお、無記名性を保つには、票の単位を 0.5票ごとにしてもいい。( 0 / 0.5 / 1.0 / 1.5 / 2.0 / …… ) これなら、「半票」の札を使うのと同じだから、誰がどう投票したのかは匿名性が保たれる。
 ただし、無記名なんか不要だから、私としては、端数にするのがいい、と思う。(ただし少数1位までの端数で十分。少数第10位までなんて、まっぴらだ。現実の採決には、少数1位までの端数しか影響しないはずだ。)


● ニュースと感想  (8月13日)

 強毒パンデミックについて、医学的な話。(特に原理的なことを話題にする。)
  → Open ブログ 「強毒パンデミック 3 (原理) 」


● ニュースと感想  (8月14日)

 不良債権処理は、日本に何をもたらしたか? 「景気回復をもたらした」という説があるが、それが虚偽であることは現状を見ればわかる。あらめて顛末を総括しよう。
  → nando ブログ 「不良債権処理の総括」
 

● ニュースと感想  (8月14日b)

 「民主党は馬鹿か嘘つきか?」について。
 「高速道路無料化」と「ガソリン暫定税率の廃止」という民主党の政策は、炭酸ガスを増やす。これは自明だ。ところが、これを試算した報告に対して、民主党は資産を否定する見解を出した。
 民主党が衆院選のマニフェスト(政権公約)に掲げた高速道路の無料化と自動車関連の暫定税率の廃止が実施された場合、二酸化炭素(CO)の排出量が年980万トン増えるとの試算をシンクタンクがまとめた。
 高速無料化と暫定税率廃止が実施された場合、自動車の輸送量が21%増えるのに対し、鉄道は36%減、バスは43%減、航空機は11%減と公共交通機関は軒並み減るという結果が出た。
 国内の運輸部門のCO排出量は2億4900万トン(07年度)で、これを約4%押し上げる計算になる。
 12日の党首討論では、麻生首相が「石油の消費が増えて環境には悪くなる」と民主党の公約を批判すると、鳩山代表は「必ずしもCO(排出量)に大きな悪影響を及ぼすということではない」と反論した。
( → 朝日・夕刊 2009-08-13
 最後の釈明が問題だ。「COなんか増えても構わない」というのならば、問題ない。それはそれで一つのポリシーである。(実際、地球温暖化のCO主因説はきわめて疑わしく、懐疑論が強い。)
 しかし、「必ずしもCO(排出量)に大きな悪影響を及ぼすということではない」という主張は、ダメだ。それは、「民主党の政策がCO増加させる」という事実を否定しているからだ。
 とすれば、民主党は次のいずれかだ。
  ・ 事実を認識できない馬鹿である。
  ・ 事実を認識しているが、あえて反対のことを言う嘘つきである。
 そのどちらであるか? ううむ。これは難問だ。   (^^);
 ともあれ、民主党は、馬鹿か嘘つきか、どちらかである。つまり、次の日本政府は、馬鹿か嘘つきか、どちらかなのだ。
( ※ ひるがえって、自民党政権は「無能」と「利権」であった。)





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「泉の波立ち」
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